この記事では、2021年10月3日に投票が終了し速報版の結果が公表された「第17回東方Project人気投票」についての感想や考察などを書いてみたいと思います。

↓本記事の各種データの出典元となる「第17回東方Project人気投票」の速報版の結果については以下の特設サイトをご覧ください。


注意
2021年10月5日、「東方人気投票実行委員会」よりいくつかの不正票が見つかり、キャラの順位変動が起こる可能性が報告されました。
そのため、10月3日に発表された速報版のデータを基にしている本記事は、今後の発表によっては内容が追記や修正などで変わる可能性がございます。
予めその点をご了承してお読みください。


追記
2022年1月17日に公開された詳細版ですが、おそらく不正表の関係などで速報版と数値や順位などが入れ替わっています。
記事を書き直すことや文章内の数値や順位だけ変えることも考えましたが、当時リアルタイムで書いた感想や考察を尊重したいため、そのまま残しておくことにしました。
そのため、本記事はあくまでも当時公開されていた速報版のデータを基にした感想や考察としてお読みください。



東方Project人気投票とは
「東方Project人気投票」とは、現在は有志である「東方人気投票実行委員会」によって運営されている東方Projectの非公式の人気投票です。
運営体制や投票の形式を変えながら第17回(Exなど番外編を除く)まで開催されている非常に歴史の長い企画であり、毎回数万人もの東方ファンが国内外から参加するということもあって非公式ながら大変注目度の高い一大イベントとなります。

現在、投票部門としては人妖部門、音楽部門、作品部門の3部門が存在しており、それに加えてアンケートも集計されています。
人妖部門は7キャラクター、音楽部門は10曲、作品部門は5作品まで投票可能で、それぞれの部門で2ポイントとなる一押しをその中から1つだけ選ぶことができます。
「東方Project人気投票」の3部門が上記の条件で開催されるようになったのは第12回からとなっています。
基本的に第12回以降は人妖部門、音楽部門、作品部門が全く同じ条件で開催され続けているため、それらの部門はポイント数まで含めて比較をすることができます。
(余談ですが、人妖部門、音楽部門の投票可能数が増えて、作品部門が新設された第12回は「東方Project人気投票」にとっても大きなターニングポイントとなっており、参加者数も歴代2位を記録しています。)


投票数
今回の「第17回東方Project人気投票」の投票数は人妖部門が41,257票、音楽部門が30,449票、作品部門が23,246票でした。
特定の部門にのみ投票する人がいるため厳密な参加者数は割り出せませんが、「第17回東方Project人気投票」に最低でも41,257人が参加したことは確かです。
例年最も投票数の多い部門である過去の人妖部門(旧キャラクター部門)と比較すると、第9回(43,737票)、第12回(42,419票)に次ぐ歴代3位の投票数となっており、参加者数も歴代3位の多さと見て間違いないかと思います。
投票数が40,000票越えの大台に乗ったのは今回含め上記の3回しかなく、直近の第16回が34,573票であったことを考慮すると、前回より7,000票以上投票数が増えた「第17回東方Project人気投票」は大成功と言っていいかと思われます。

なぜ、ここまで「第17回東方Project人気投票」の投票数が増えたのでしょうか。
投票数増加の要因として考えられる要因をいくつか並べて見たいと思います。

・整数STGの最新作である「東方虹龍洞」が発売から半年も経っておらず新鮮さが残っていた
・「東方ステーション」とのコラボによる告知の増加
・TwitterまたはGoogleのアカウントでログインして投票できるようになり参加ハードルが低下した
・許諾を得た商業向け二次創作や様々なコラボ企画の増加によって東方に触れる窓口が増えた


まず1つ目の要因として考えられるのが「東方虹龍洞」効果です。
近年の「東方Project人気投票」は性質上、話題性が非常に高く投票対象に新キャラクターや新曲が多数増える整数STGが初参加となる回の方が投票数が伸びる(第12回や第16回など)傾向にあります。
特に今回の「第17回東方Project人気投票」は開催時期が9~10月と、「東方虹龍洞」の発売から半年も経たぬうちの開催となっており、最新作が高い話題性を残したままの状態で開催を迎えられたのは大きそうです。

2つ目の要因は「東方ステーション」コラボです。
今回は初の試みとなる開票特番が投票最終日に放送され、番組内では実際に各部門の上位がリアルタイムで発表されるなどしました。
また、「東方ステーション」ではユーザー参加企画として景品が当たる独自の順位予想クイズも行われました。
番組内では投票受付終了直前まで投票に参加するよう呼びかけが行われるなどし、コメントなどでは放送を見て投票に参加したという人が多数見受けられたため、参加者増への一定の影響はあったものかと思われます。

3つ目の要因は、TwitterまたはGoogleのアカウントでログインすることでも投票に参加できるようになったことです。
これまで「東方Project人気投票」ではメールアドレスを使って投票IDを発行し、それを入力して投票するという形式を取っていたのですが、今回より特設サイトのリニューアルに伴ってTwitterまたはGoogleのアカウントでログインすることでの投票も可能となりました。
投票までの手順がワンテンポ減り、参加へのハードルが低くなったことは、特にライト層などに影響した可能性があります。

4つ目の要因として挙げられるのは、許諾を得た商業二次創作や様々な媒体との各種コラボ企画の影響です。
近年はコンシューマやスマホ向けに、東方Project二次創作ゲームが多数リリースされました。
また、東方Projectは他ゲームやアパレルブランド、はたまた自治体など様々な媒体とコラボ企画を行っており、今まであまり接点の無かった人の目に留まる機会も増えてきています。

もちろん、これらの他にもファンによる盛んな同人二次創作活動やコンテンツとしての継続性など、東方Projectには新規ファンを惹きつけられそうな要素は数多くありますし、様々な要因が複合して投票数は増加したものと思われます。


人妖部門
「第17回東方Project人気投票」の人妖部門の投票数は41,257票でした。
投票対象が206キャラクターもいる都合上、全てのキャラクターを取り上げることは難しいので、本項目では1位から20位までの上位の動きと「東方虹龍洞」の新キャラクターについてピックアップして見てみようと思います。

まず、上位10キャラクターについてです。

・1位   魂魄妖夢
・2位   霧雨魔理沙
・3位   博麗霊夢
・4位   古明地こいし
・5位   フランドール・スカーレット
・6位   十六夜咲夜
・7位   レミリア・スカーレット
・8位   藤原妹紅
・9位   古明地さとり
・10位 西行寺幽々子


もう既にお気付きの方もいると思いますが、実は今回順位が一桁の9キャラクターは前回の第16回と全く同じ顔ぶれとなっています。
それらの9位までのキャラクターは前回から並び順だけ変わるという形となり、10位にようやく前回13位で躍進した西行寺幽々子の名が見受けられます(ただし、後述するように実際には上位でも結構なポイント差があります)。

1位は前回に引き続き魂魄妖夢でした。
なんと13,009ポイントを獲得し、2位と1,100ポイント以上の差をつけたぶっちぎりの1位となりました。
人妖部門の投票が現在の形式になった第12回以降の記録において、第12回の博麗霊夢が集めた15,427ポイントに次ぐ歴代2位のポイント数となります。
最新作の「東方虹龍洞」で自機を務めなかった逆風の中での2連覇ということもあり、一押しの多さなどから非常に根強い人気が窺えます。

2位は霧雨魔理沙で11,874ポイント、3位は博麗霊夢で11,471ポイント、4位は古明地こいしで11,184ポイントと2~4位争いはハイレベルな接戦となりました。
特に魔理沙は第4回以来となる霊夢越えの順位となります。

5位はフランドール・スカーレットで10,415ポイント、6位は十六夜咲夜で10,059ポイント、7位はレミリア・スカーレットで9,498と、これらの5~7位争いも中々の接戦でした。
今回7位のレミリア・スカーレットまでの7キャラクターは全体から見てもずば抜けてポイントが高い上、実は1~7位は第11回からメンバーが一人も変わっていません。
その上、最上位陣と言えるこれらの7キャラクターの人気は年々上がっており、次回以降の投票でも安定した順位が予想されます。

8位は藤原妹紅で6,660ポイント、9位は古明地さとりで6,318ポイント、10位は西行寺幽々子で5,974ポイントとなっており、この先の11位以降も含めて接戦を繰り広げています。

では、11位から12位までも見てみましょう。

・11位 射命丸文
・12位 アリス・マーガトロイド
・13位 東風谷早苗
・14位 鈴仙・優曇華院・イナバ
・15位 比那名居天子
・16位 八雲紫
・17位 秦こころ
・18位 チルノ
・19位 パチュリー・ノーレッジ
・20位 多々良小傘


11位から20位のキャラクターも基本的には前回より±0~1位しか順位が変動していませんが、例外的にチルノのみ前回24位から18位と大きく躍進しています。
これらの1位~20位のキャラクターは、「東方ステーション」の開票特番においてリアルタイムで順位が発表されたキャラクターとなります。

ちなみに、1位~20位までのキャラクターの初登場作品は以下のようになっています(主人公コンビの霊夢と魔理沙を除く、アリスは「東方妖々夢」にカウント、文は書籍版「東方文花帖」にカウント)。

・東方紅魔郷 5名
・東方妖々夢 4名
・東方永夜抄 2名
・東方文花帖 1名
・東方風神録 1名
・東方緋想天 1名
・東方地霊殿 2名
・東方星蓮船 1名
・東方心綺楼 1名

2000年代以前に初登場したキャラクターが17名、2010年代以降に初登場したキャラクターは1名と、比率としては圧倒的に2000年代の作品に上位のキャラクターが集中しています。
特に「東方紅魔郷」は5名が20位以内にランクインしているのみならず、20位台にも21位にルーミア、27位に紅美鈴がランクインしており、記念すべきWindows版の初作品として未だに絶大な影響力を持っていることが窺えます。
続く「東方妖々夢」も4名が20位以内にランクインしており、二連覇を達成した妖夢を始め根強い支持を受けています。

では、過去作とは真逆の最新作である「東方虹龍洞」のキャラクターの順位はどうだったのでしょうか。
「東方虹龍洞」で初登場したキャラクターの順位は以下のようになっています。

・44位   天弓千亦
・54位   菅牧典
・56位   飯綱丸龍
・60位   姫虫百々世
・89位   豪徳寺ミケ
・105位 玉造魅須丸
・119位 山城たかね
・137位 駒草山如


天弓千亦が44位と中々の好順位をマークしており、それに菅牧典や飯綱丸龍、 姫虫百々世が続く形となっております。
特筆すべき点としては、作中で深い関係にあった典、龍、百々世の三人が近い順位をマークしていることが挙げられます。
(場合によっては千亦も含めて)二次創作でも一緒に登場することが多いため、これらのキャラクターはセットで投票した人が多かったのかもしれません。
それ以外の新キャラクターを見てみると、やはりどうしても他キャラクターと関わる描写が現時点では少ないことがネックとなっているように思われます。
例えば山城たかねの場合なら、今後原作で関係性のある河城にとりと直接絡むなどの掘り下げが行われるなどすれば伸び代がありそうです。


音楽部門
「第17回東方Project人気投票」の音楽部門の投票数は30,449票でした。
こちらは投票対象の楽曲が567曲と途方もない数となっていますので、上位の楽曲や「東方虹龍洞」の新曲の一部、それといくつか気になる点などをピックアップして見てみようと思います。

1位から10位はこちらの楽曲です。

・1位   U.N.オーエンは彼女なのか?
・2位   亡き王女の為のセプテット
・3位   偶像に世界を委ねて 〜Idoratrize World
・4位   ハルトマンの妖怪少女
・5位   月まで届け、不死の煙
・6位   恋色マスタースパーク(恋色マジック)
・7位   ピュアヒューリーズ ~ 心の在処
・8位   上海紅茶館 ~ Chinese Tea
・9位   幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life
・10位 神々が恋した幻想郷


「東方紅魔郷」での初登場以来根強い人気を維持し続けている「U.N.オーエンは彼女なのか?」と「亡き王女の為のセプテット」がワンツーフィニッシュ、3位は「東方鬼形獣」より参戦の「偶像に世界を委ねて 〜Idoratrize World」となりました。
特に前回の第16回で初登場ながら4位に食い込んでファンを驚かせた「偶像に世界を委ねて 〜Idoratrize World」は今回3位とさらに躍進しており、近年最大のヒット曲と言っていいでしょう。
ちなみにスマホ向け二次創作ゲームの「東方ダンマクカグラ」に、原曲がそのまま収録されて話題となった「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」は11位(前回14位)と健闘していました。

次は最新作の「東方虹龍洞」を見てみましょう。
「東方虹龍洞」の楽曲の中で100位以内に入ったのは以下の3曲です。

・30位 あの賑やかな市場は今どこに 〜 Immemorial Marketeers
・46位 龍王殺しのプリンセス
・83位 星降る天魔の山


「東方虹龍洞」の新楽曲で一番順位が高かったのは、30位の「あの賑やかな市場は今どこに 〜 Immemorial Marketeers」でした。
6面ボスである天弓千亦のテーマ曲であり、ラスボス戦で流れる楽曲らしく迫力がありながら物悲しい題材を秘めた曲でもあります。
それに続く「東方虹龍洞」楽曲として、姫虫百々世のテーマ曲の「龍王殺しのプリンセス」が46位、飯綱丸龍のテーマ曲の「星降る天魔の山」が83位と高順位をマークしました。
音楽部門の全体的な傾向と同じく、曲自体の良さはもちろんのことですが、ゲーム内で流れるシチュエーションやテーマとするキャラクターの人気も順位に色濃く反映されているように思われます。
その他、惜しくも100位以内に入らなかった「東方虹龍洞」楽曲としては、104位に「待ちわびた逢魔が時」、114位に「大吉キトゥン」、121位に「幻想の地下大線路網」がそれぞれ入賞しています。
実は「大吉キトゥン」は1面ボスのテーマ曲としては全体から見て3番目に順位が高い曲となっており、「東方虹龍洞」楽曲の中でも特に意外な形で健闘しています。

最後に、おまけとして道中曲の人気トップ10を確認してみます。

・8位   上海紅茶館 ~ Chinese Tea
・10位 神々が恋した幻想郷
・25位 ラストリモート
・29位 デザイアドライブ
・33位 魔法少女達の百年祭
・38位 メイドと血の位懐中時計
・39位 フォールオブフォール ~ 秋めく滝
・45位 東方妖々夢 ~ Ancient Temple
・49位 明日ハレの日、ケの昨日
・52位 Bad Apple!!


全体の上位10曲に食い込んだ「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」と「神々が恋した幻想郷」が、例年通り2強となっています。
道中曲はそれ以外も20位台からコンスタントに入賞しており、傾向としては3面、4面、5面とエキストラステージの楽曲が上位に上がりやすいようです。
理由としては、3面、4面、5面とエキストラステージは道中が比較的長くなっていることが考えられ、道中曲の中でも印象に残るような楽曲がゲーム内で採用されてるように思えます。
その他にも、「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」や「メイドと血の位懐中時計」、「東方妖々夢 ~ Ancient Temple」のように後に弾幕アクション作品などでキャラクターのテーマ曲として採用された楽曲や、「フォールオブフォール ~ 秋めく滝」のように二次創作などで実質的に中ボスのテーマ曲のように扱われる曲など、やはりゲームのシチュエーションや関連するキャラクターの要素なども影響していそうです。


作品部門
「第17回東方Project人気投票」の作品部門の投票数は23,047票でした。
全54作品がエントリーしており、ゲームから書籍、音楽CDまで様々なジャンルの原作が投票対象となっています。

作品部門の1位~10位は以下の作品です。

・1位   東方紅魔郷
・2位   東方永夜抄
・3位   東方妖々夢
・4位   東方風神録
・5位   東方地霊殿
・6位   東方紺珠伝
・7位   東方虹龍洞
・8位   東方鬼形獣
・9位   東方星蓮船
・10位 東方神霊廟

見ての通り整数STG作品が上位を埋め尽くしている上、6位の「東方紺珠伝」までの上位6作品は、作品部門が第12回に新設されてからどれも全く順位が変わっておりません。
連載中の漫画などを除いて、基本的に作品は単体の完成された物として評価されるため、既存作品が人気の差を後から巻き返すというのは現実的には非常に難しくなっているようです。
そんな中、最新作の「東方虹龍洞」は初登場にして7位と中々の好順位を記録しました。
好評だったアビリティカードシステムやダウンロード版の最速販売での界隈の盛り上がりなど、人気の出そうな要素は多々ありましたのでそれが結果として現れたようです。


まとめ
「第17回東方Project人気投票」も無事終了し、「東方ステーション」とのコラボという形で開票特番まで放送されました。
結果としては魂魄妖夢の二連覇を始め、開催前から注目を集めていた最新作の「東方虹龍洞」も多くの新キャラクターや新楽曲が善戦しまし、参加者も大幅に増えるなど企画の盛り上がりを感じさせられました。
今のところ「東方Project人気投票」は毎年開催されているため、おそらく来年も開催されると思われるので次回も楽しみです。