本記事では「東方虹龍洞」のエキストラステージやそのボスである姫虫百々世の元ネタなどについて考察してみようと思います。

↓これまでの「東方虹龍洞」の各考察記事はこちらです(1~3面は体験版時点での考察になります)。









ステージ
「東方虹龍洞」EXTRA STAGEの舞台は「虹龍洞」で、ステージタイトルは「終末への採掘 Apocalyptic Mining」です。
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ステージ名の「虹龍洞」というのが示す通り、エキストラステージではもう一度虹龍洞に戻り気がかりだった謎の人物(玉造魅須丸)と謎の鉱物(龍珠)の調査に再び赴くことになります。
一度は酸素不足によって虹龍洞から撤退した自機でしたが、天弓千亦を倒した時に手に入れた無酸素でも呼吸が出来るようになる空色の勾玉というアビリティカードを持っていくことで、人間でありながら虹龍洞の無酸素エリアにも立ち入れるようになりました。

エキストラステージのステージタイトルは「終末への採掘 Apocalyptic Mining」です。
終末への採掘というのは、危険性が指摘されている伊弉諾物質である龍珠の採掘が行われていることを指している可能性があります。
また、サブタイトルのApocalyptic Miningも直訳すると終末論的な採掘になります。
黙示録のような、世界が滅亡した後の、などかなり強いニュアンスがあるApocalypticという単語が使われていることから、伊弉諾物質を採掘することの危険性が暗に示されているように思えます。

エキストラステージ道中のテーマ曲は「幻想の地下大路線網」です。
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坑道探検をイメージした曲らしく、今作の道中曲の中でもひときわ力強い曲調の楽曲となっています。


ボス
「東方虹龍洞」エキストラステージのボスは姫虫百々世です。
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姫虫百々世は大蜈蚣の妖怪であり、ストーリーでは飯綱丸龍の親友としてアビリティカードの原料となる龍珠を虹龍洞から採掘する役割を担っていました。
能力は「龍を食べる程度の能力」を持ち、詳しくは後述しますが真偽不明ながら龍をも喰らう妖怪という評価を受けているようです。
二つ名の「黒きドラゴンイーター」も、龍を食べることを意識したネーミングとなっています。

百々世は洞窟から龍珠を掘り出したところ、親友の飯綱丸からビジネスの話を持ちかけられ今作のストーリーに絡むこととなります。
アビリティカードの原料になる龍珠を採掘するために山を削り虹龍洞を掘る役を引き受け、その報酬として採掘した龍珠の一部を貰って食べていたようです。
親友である龍(めぐむ)を食べる代わりとして龍珠は十分だったなど物騒なことも考えていたようですが、引き受けた龍珠の採掘という仕事はしっかりと行うなど好戦的ながら仕事については真面目に取り組む性格のようです。
また、百々世は天弓千亦が山の頂上で開いた最初のアビリティカード市場に参加した数少ない一人でもあります。
ただ、他の参加者だった親友の飯綱丸とエキストラステージで会話シーンのあった菅牧典とは違い、面識があるはずの千亦については描写が不足しているためお互いどう思っているのか現時点では明かされていません。
龍珠の正当な所有者を名乗る玉造魅須丸とは、典が百々世を唆したこともあってお互い相手のことを盗掘者だと認識し険悪な雰囲気となりました。
魅須丸によると、妖怪の山を掘りまくって伊弉諾物質を盗み出しているのは百々世が率いる妖怪集団らしく、百々世自身も自分のことを監督と名乗っているので部下のような妖怪が複数人いて龍珠の採掘を手伝っている可能性も高いのですが詳細は不明です。

東方の世界観でも、大蜈蚣は醜悪なフォルムや不快な毒などを持つため嫌われ者の妖怪とされているようです。
このような妖怪であるため近づこうとする者も少ないのですが、百々世は浴びせられた負のオーラから魔力を錬成できるので強力な魔力を持っています。
そのため、百々世には強大な存在である龍すら近づかず、麓では龍殺しの最強の妖怪だと恐れられているとのことです。
ただ、龍に関する設定は設定テキストにおいても聞き伝たえとして書かれており、本当のところは龍を食べられるのかどうか誰も知らないそうです。
これらの最強伝説の真偽は別としても、大天狗である飯綱丸と対等な親友であるなど百々世が強力な妖怪であることには変わりなさそうです。

姫虫百々世のテーマ曲は「龍王殺しのプリンセス」です。
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龍殺しの最強の妖怪と恐れられている百々世のテーマ曲らしく、曲名も龍殺し関連のものとなっています。
物騒な曲名と大蜈蚣という題材に反して、解説に書かれているように意外にも楽しく明るげな楽曲です。
これは百々世の好戦的ながら真っ直ぐでさっぱりとした小気味のいい性格を反映しているのではと思います。


スペルカード
姫虫百々世はエキストラボスなため10種類のスペルカードを使用します。

・蠱毒「カニバリスティックインセクト」
・蠱毒「ケイブスウォーマー」
・蠱毒「スカイペンドラ」
・採掘「積もり続けるマインダンプ」
・採掘「マインブラスト」
・採掘「妖怪達のシールドメソッド」
・大蜈蚣「スネークイーター」
・大蜈蚣「ドラゴンイーター」
・「蠱毒のグルメ」
・「蟲姫さまの輝かしく落ち着かない毎日」

全体的にパロディらしきネーミングのスペルカードが多いのが特徴です。
題材としては大蜈蚣や蟲、採掘、毒などを主に扱っているようです。


姫虫百々世の名前の由来
姫虫百々世の名前の由来ですが、まず苗字の姫虫はケイブによる弾幕シューティングゲームの虫姫さまが元ネタかと思われます。
ケイブという単語も洞窟という意味ですし、スペルカードの名前にも使われています。
名前の百々世は、そのまま百足から取られています。


元ネタ考察
姫虫百々世の元ネタは種族名の通り大蜈蚣の妖怪です。
これらの大蜈蚣に関する逸話と坑道などを掘る山堀り師を蜈蚣になぞらえたことを元ネタとした採掘者的な要素で百々世というキャラクターは主に形作られています。

まず大蜈蚣が登場する逸話ですが、日本には有名な物が二つあります。
一つは藤原秀郷に退治された三上山の大蜈蚣で、もう一つは男体山の化けた大蛇と戦場ヶ原で戦って敗れた赤城山の化けた大蜈蚣です。
三上山の大蜈蚣は大蛇(龍神)の一族を苦しめるほど強大で、瀬田の唐橋で知り合った大蛇に懇願されて三上山まで退治に赴いた秀郷と激闘を繰り広げました。
その大蜈蚣の体長は三上山を七巻半するほどでしたが、最終的には大蜈蚣は秀郷の矢によって退治されてしまいます。
また、上野国(現在の群馬県)の赤城山の化けた大蜈蚣は、下野国(現在の栃木県)の男体山の化けた大蛇と中禅寺湖をどちらの国の領地にするか戦場ヶ原の地で争いました。
結果は男体山の化けた大蛇が勝ったため中禅寺湖周辺は下野国の領地となり、この戦いが戦場ヶ原という地名の語源になったと伝えられています。
この逸話は毛野国が上野国と下野国に分裂した際の国境を巡る領土争いが元になっている可能性が指摘されています。
これらのように、大蜈蚣には龍(大蛇)に勝った逸話もあれば負けた逸話もあります。
百々世が龍を食べられるのかどうか濁されているのも、このように複数の逸話があるためなのではと思います。
ただ、龍と対決や対立をするような逸話がいくつも残されていることから分かるように、大蜈蚣が強大な存在として認識されていたのは事実ですので、百々世が強力な妖怪として恐れられているのも全くおかしくありません。

ストーリーで龍珠の採掘役を務めていたり、シャベルとつるはしを手に持っていることからも分かる通り、百々世は蜈蚣を象徴としてあやかる採掘者の要素もキャラクターのモチーフに含んでいます。
一説には蜈蚣の足のように無数に入り組んでいる坑道を蜈蚣になぞらえたのが山堀り師を蜈蚣と結び付けた所以といい、戦国大名家である甲斐武田家の金掘衆(百足衆)などにその名が見えます。

また、日本では一般的なイメージとして、蜈蚣は絶対に後退しない勇猛な存在や攻撃的で凶暴な存在と古くからみなされてきました。
このようなイメージも百々世の性格に反映されていそうです。

最後に、これはキャラ設定に関係しているか不明ですが、ムカデ綱に属するゲジ目のゲジゲジの名前の由来は天狗星が降りてくる時間とされる下食時(げじきどき)に由来しているという説があります。
偶然かもしれませんが、元々は流星を動物に見立てた存在が単語の由来である天狗であり、「星空を操る程度の能力」を持っていてスペルカードも星に関連しているものがある飯綱丸が百々世の親友なのは面白いですね。


東方の虫キャラクターについて
大蜈蚣の妖怪である姫虫百々世以外にも、これまでも東方には虫をモチーフとしたキャラクターとして蛍の妖怪であるリグル・ナイトバグや土蜘蛛の妖怪である黒谷ヤマメ、アゲハチョウの妖精であるエタニティラルバがいました(妖精であり常世神との関連も指摘されているラルバはこの中では少々特殊ですが)。
これらのキャラクターは全員1面ボスでしたが、百々世はエキストラボスという破格のポジションで登場しました。
「東方求聞史紀」での稗田阿求の幻想郷縁起への記述によると、古来蟲の妖怪といえば鬼や天狗と並ぶ恐怖の対象であったが最近はその威厳を失って久しいそうです。
また、蟲たちのリーダーともいえる蟲の妖怪であるリグルが幼い少女の姿をしていることは、蟲の恐怖が衰えていることと関連付けられて記されています。
大蜈蚣ながら最強の妖怪とまで評されている百々世が、蟲のリーダーとされるリグルとどう絡むのかや幻想郷縁起で阿求にどう評価されるのかなど、もし今後書籍などで登場して扱われる機会があるなら気になるところです。


まとめ
姫虫百々世は大蜈蚣という妖怪の中でもかなり強力そうな存在として登場しました。
今のところは飯綱丸のために龍珠を採掘しているようですが、それが一段落したらどのような活動をするのかも気になります。
ぼかされている龍との力関係の件もありますし、今後の描写が待たれます。